タブー
 02

「そんなっ……僕、困りますっ!」

 どうにか男の手から逃れようと、精一杯引っ張ってみるが、自分の倍ほどの体格に違いのある男の力に適うはずもなく、易々と兄の部屋に連れてこられた。

 部屋の中に入ると背中を押され、その勢いで部屋の中心まで飛ばされた。

 あっと言うまに、天音はガラの悪い兄の友人達に囲まれる。

「天音……」

 突然、自分の弟が現れて、皇紀は動揺したように名を呼んだ。  

「この子、なんですか長谷川さん」

 短髪を鮮やかな金色に染め上げた、顔がピアスだらけの男が、不思議そうに言った。

「皇紀の弟。いっしょに遊ぼうと思って連れてきた」

 長谷川の言葉に、そこにいた全員が天音を見た。突然現れた侵入者に、皆が困惑していた。

「もう長谷川さん、なんの冗談ッスか? ガキっすよ、ガキっ。それも男の」

 長髪の男の言葉で、張り詰めた雰囲気が崩れた。だれもが長谷川の酔った戯れ言だと思ったからだ。

「冗談なんかじゃねーよ。俺は前からこいつを狙ってたんだ」

 長谷川の手が後ろから伸びて、天音を包み込む。まるで羽交い締めにされている気分だった。

「狙ってたって……何なんです?」
「狙うって言ったら、アレしかないだろ。俺、一回ガキとやってみたいとずっと思ってたからさ」   

 クスッと笑う声が背後から聞こえて、天音は背筋が寒くなった。

「やるって……男ッスよ」
「ガキのケツってすげーイイって言うだろ。この子ぐらい可愛いけりゃ、全然いけるかなって思ってさ」

 天音は青ざめた顔をして震えていた。
 男の言う意味を、天音だって分っていた。

「マジっすか? うわ〜っ、やっぱ長谷川さん鬼畜だな〜」

 そう言いながら彼らは笑っていた。まるで、これからゲームでも始めそうなノリだった。

「なあ、皇紀。この子、犯っていいよな?」

 天音は縋るような気持ちで兄を見た。いくら天音を気に入らないと言っても、自分の本当の兄弟なのだ。そんな酷いことを許すはずなんてない。

「別に……俺には関係ないッスから……」

 残酷な言葉に、天音は目の前が真っ暗になった。

「そんな……」

 体から力が抜けていくような気がした。

「じゃあ皇紀の了解も得たことだし、気持ちいいこと始めようか、天音」

 天音は震えが止まらなかった。

「あ…あの…や、やめて…ください……」

 震えながらも懇願する。

「怖いか?」 

 青ざめながら、コクコクと天音は頷いた。

「大丈夫、ちゃんと気持ちよくしてやるからな」

 長谷川はうっすらと笑いながら天音のシャツに手を掛ける。

「やっ!…やめてッ……ヤダっ!!」
「静かにしろっ!! じゃねーと痛い思いをするのはお前だぞ!!」

 さっきまでの笑みからは嘘のように、凶暴な怒声で天音を威圧する。男の言葉が脅しじゃないのは、その狂気的な眼差しを見たらわかった。

「飲め……」

 長谷川は錠剤を取り出して、天音の口元へと差し出した。

 鮮やかなブルーの色をした薬だった。
 飲みたくなんてなかった。だけど、冷酷なその視線が怖くて、怯えながら天音は口に含んだ。

 長谷川が持っていた酒で、無理矢理流し込ませた。

 アルコールの苦さと、咽を焼くような熱さにむせて咳き込む。飲み込みきれなかったお酒が口元を伝って落ちた。




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