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罠
11 「あぐぁああああっ!!」 山崎は鼻を押さえて、転がり回る。どうやら鼻の骨が折れたようだった。 「ちっ、痛てーじゃねーか」 長谷川は殴った拳を軽く振る。 「おっ、俺はかんけーねぇ。山崎にそそのかされただけだ!」 みっともなく言い訳をする男に、誰も耳を貸すものはいない。 その上、自分だけ逃げようとする男までいた。 しかし、もちろん逃げられるはずもなく。長谷川が連れて来た男達に捕まった。 「ったく、俺が来るまで待ってろって言っただろう。この馬鹿っ!」 皇紀の頭を長谷川が殴る。 「だって、居ても立ってもいられなくて……」 皇紀はしゅんと項垂れてしまった。 「す……すいません……」 「おっ、おにいちゃんは、ちゃんと僕を助けてくれました」 長谷川が驚いたように振り返る。 「皇紀……てめぇー、弟に愛されてんな」 照れくさそうに皇紀は俯いた。 長谷川は自分の着ていたジャケットを天音に掛けてやる。 「あのっ……こんなの、汚れますから……」 天音は自分の汚れた躯が気になった。 「もう汚れちまったし。それに、こんなもん全然汚れたってかまわねーよ」 微笑む長谷川を、天音は何故か直視できずに眼を逸らす。顔がやたらと熱かった。 「加賀谷、こいつを俺のマンションに連れてって、蓮見の先生に診て貰ってくれ」 加賀谷は長谷川の父親の秘書のような存在なのだと、説明された。 「皇紀も一緒に行け。こんな状態じゃ家にかえせねーだろ。友達の家に止まるだとかなんだとか連絡しとけよ。騒がれても困るしな」 だが、長谷川の言葉に皇紀は反抗する。 「いやだ。俺もココに残って、こいつらぶっとばしてやる」 ハッと気づいたように、皇紀は天音を見た。 長谷川は天音を抱き上げて、皇紀に渡す。 「長谷川さん……あの、助けてくれて、ありがとうございます」 「馬鹿っ、礼なんて言うな。お前は俺のモノだからな、助けるのが当たり前だろ」 お前のモノと言われるのが、やけに嬉して恥ずかしかった。 こんな汚れた僕でも、まだそう思ってくれるのかな? 「俺の方こそ悪かったな……助けるのが遅くなって……怖い思い、させちまったな……」 長谷川の手が天音の頬を撫でる。 「ど、どうした、痛いのか!?」 動揺していた長谷川が息を吐く。 「そうか……大丈夫だ。ここもすぐに片付けて、天音のところに戻るから」 「本当に……?」 それを聞いて、天音は力が抜けたのか意識が薄れ始めた。 天音が皇紀に抱えれて、家から出て行こうとした瞬間、派手に何かがぶつかる音がした。その後に、男達の怒声や悲鳴、絶叫が響きわたる。 部屋の中で何が起きてるか、想像するに容易かった。 天音が目を覚ますと、目の前に長谷川がいて驚いた。 辺りは既に真っ暗だ。天音の為なのかスタンドライトの仄かな明かりだけ灯されていた。 長谷川のマンションに連れてこられて、皇紀に風呂に入れられて、お医者さんに診て貰ったまでは、なんとなく覚えている。 そう言えば、ずっと付き添ってくれていた皇紀の姿が見えない。もしかして別の部屋に寝ているのだろうか。 眠っている長谷川は、なんだか彫刻のようだと天音は思った。 キレイとか格好いいとかいうのではなくて……そう例えるなら、雄々しいという感じだ。 まるで獅子のような……そうゆうイメージだった。 ← / → / 戻る / Top |