12

 起きている時とは、大分印象が違うと思った。

 なんかどうしよう……長谷川さんの顔みてたら、胸がドキドキしてきた。

 ならば、止めればいいと思うのだが、目が反らせない。
 ドキドキして苦しいのに、もっと見ていたいと思ってしまう。

 僕、どうにかなっちゃったのかな……?

「そんなに見つめられたら、顔に穴が開いちまう」

 突然、目が開いて、天音は驚いた。

「お前……目が溢れそうだな」

 そう言って笑う顔に、天音は頬が赤くなる。

「あっ、あの僕、勝手にベット使わせて貰って……」
「気にするな、お前はケガ人なんだし……お前ぐらい小さけりゃ、いてもいなくても関係ねーよ」

「今日は、その……助けてくれて本当に、ありがとうございました」

「だから、礼はいらないって言っただろ」
「でも、長谷川さんが来てくれて、すごく嬉しかったから……」

 変に思われると思いながらも、天音は顔が熱くなるのをとめられなかった。

「可愛いこと、言うじゃねーか」

 破顔して笑う長谷川に、更に耳まで赤く染める。

「でも、今日の事は、俺の責任でもあるからな……」
「そんなっ、長谷川さんはなにも悪くないです」

「でも、あいつらを散々煽ったのは俺だしな。せっかく釘さしてやったのに、あの馬鹿どもが……」

 彼らがどうなったかなんて、天音には怖くて聞けなかった。

「まさかあいつらが、ここまで外道だとは思わなかった。もうちょっとマシなヤツらだと思ってたんだけどな。ホントに、悪かったな」

 天音は首を振った。
 言いたい事を言うと、話す事がなくなって天音は困ってしまった。

 たぶん、長谷川は皇紀より年上で、そんな人に一体なにを話したらいいのか天音にはわからなかった。

 だが、そんな沈黙を破ったのは、長谷川だった。

「ホントはな、今日お前と会う約束をしてたんだぜ。皇紀に早く帰って来いって言われただろ」

 突然の話で天音は驚いた。

「お前の家でずっと待ってたんだぜ。帰って来たら、たっぷり可愛がってやるつもりだったのに、全然帰ってこねーし、そのうちお前の友達が心配して連絡してきてさ。あの馬鹿どもがお前を攫ったって分ったんだ」

 長谷川の言葉で、天音はようやく事の次第を理解した。

 だけど、そんな事より気になったのは、長谷川が天音を可愛がると言った言葉だった。

 もし、あんなことさえなかったら、僕は長谷川さんにエッチして貰えたのかな……。

 そう思うと、すごく悔しいような、恥ずかしいような気持ちになった。

「どうした、顔を赤くして……俺に抱かれる事を想像して、その気になったか?」

 からかうように長谷川が言うと、天音は更に顔中を赤く染める。

「お前は、ホントに可愛いな」
 
 どうしよう……長谷川さんに言われてこんなに嬉しいなんて……。

「あ、あの……僕のこと……嫌じゃないですか?」

「俺は嫌いなヤツを自分のベッドには上げないぜ」

 天音は自分の胸が壊れそうなほど高鳴っていて、どうしたらいいか分らなくなる。

「でも……あんないっぱいの人にされて……汚いとか……あと躯にいっぱい傷……乳首にも穴あけられて……」

 思い出すと、急に胸が苦しくなって、目頭が熱くなった。

「馬鹿っ、んなもん心配してたのか? そんなしょーもねーこと考えんな。お前は俺の腕の中で、可愛く啼いてりゃーいいんだよ」

 天音の不安を軽く一蹴する長谷川に、思わず涙が止まった。

 凄く……嬉しかった。

「あっ……あの、僕を……抱いてください」

 天音は勇気を振り絞って言った。
 
 こんな女の子みたいなことを言うのは死ぬほどはずかしい。
 それでも……長谷川に抱いて欲しかった。
 いやな記憶もまるごと、抱いて忘れさせて欲しい。

「いいぜ、死ぬほど可愛がってやる」

 長谷川の言葉に、天音は破顔した。

「ただし……ケガが癒えてからな」

 その一言に、天音の表情は一転して、気をおとす。

「そんな残念そうな顔するな。いやらしいな天音は」

 クスクスと笑われて、天音は身を隠したかった。

「今日はこれだけな」

 そう言って、長谷川は天音の口唇を奪った。

 長谷川の与えるキスは、繊細というより強引だ。それでも、まるでそこから溶けてしまいそうなほど、甘く蕩けるような口づけだった。

 キツク何度も舌を吸われて、天音は気が遠くなりそうだった。

 何度も深く口づけたというのに、長谷川が離れていくと、寂しくなった。もっと欲しいと思う。

「もう寝ろ。俺が添い寝してやるから」

 長谷川の大きな手で頭を撫でられると、とても安心した。
 このままじゃ眠れないと、あんなに思ったのに、すぐに睡魔が天音を襲う。

「今はゆっくり寝ろ。そして早くケガを治せ。言っておくが俺の理性は、そんなに持たねーんだぞ」

 長谷川の言葉も、どこか遠くで話しているようだった。
 ただ撫でられるその手の温もりが、天音を夢へと誘った。

  END

 

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