迷走

 04

 やはりあの人でなかったことに僕は落胆していた。

「ねぇ、君さ。男に犯されたことあるでしょ」

 僕は首を振った。

「嘘つくなよ。尻触られて感じてるくせに」

 羞恥で顔が赤くなる。

 口脣が耳につくほど近くで喋られて、気持ち悪くて堪らなかった。

「なあ、俺にも犯らせろよ。ここにオレのぶっといの挿れてグチョグチョさせろよ」

 男はそう言って服の上から、僕のアナルに指を突き立てる。

「ひぅ……ううっ……」

 僕はただ身を竦めて、嫌悪に耐えた。

「ねえ、君。ホントに可愛いなぁ〜」

 男が僕の耳を舐める。耳の孔まで舌を入れられて、ニュチャニュチャと嫌な水音が響く。

 僕は余りの気持ち悪さに涙が出た。  

 男の手は更に大胆になって、僕のズボンのベルトを外し、下着ごとズボンを脱がせようとした。

 流石にそれだけは僕も必死に抵抗した。かろうじて動く左手でズボンと下着を掴む。

 少しの間、攻防が続いて、急に引っ張る力がなくなった。

 ほっとしていたら、後ろから下着の中に手を入れられた。

 抵抗する間もなく、彼の指が僕のアナルの中に押し込まれていく。

 深夜までオナニーしていた僕のアナルは簡単に男の指を侵入させた。

「なんだ、柔らけーじゃん。やっぱり処女じゃねーな。清純な顔して本当は淫乱なんだな」

 へっへっへっと下卑た男の笑いが、僕に羞恥と罪悪感に苛んだ。

 男の芋虫のような指が僕の中で蠢いている。

「いやっ……」

 僕は小さな悲鳴を上げた。

 他人が体内を探る感触は、体中の毛が逆立つほどの嫌悪と、恐怖を感じた。

 しかし、僕のそんな気持ちなど構いもしない彼の指は、もっとも敏感な場所を探ろうとしていた。

 どうにか逃れようと身を捩ろうとしても無駄だった。

 彼の指が前立腺に触れたとたん、叫んでしまいそうだった。

「ひぃう……っ!」

 辛うじて歯を食いしばって耐えた。

 しかしその間も、彼の指は前立腺を責め立てている。

 躯がビクビク震えるのが止まらなった。

 指先で擦られる度に、痺れるような快感が体中に走った。

「んんっ……ふ、んっ……」

「お尻の中を弄られて、こんなに感じるなんて悪い子だな」

 愉しげに男が耳元で囁く。

 こんな男の指で感じるなんて、堪らなく屈辱的だった。

 それ以上に、全身が震えるほど快感に喜んでる淫らな躯が嫌だった。

 男の手が僕のペニスに触れる。服の上から擦るように撫でられた。

「チンポもびんびんじゃねーか、この淫乱」

 いひひっ、と愉しげに男が笑う。

 嫌だ。
 
 嫌だ。

 助けて、元木さん────!

 僕は無意識に心の中で、あの人の名前を呼んでいた。



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