Real

 18

 俺は背筋にゾクリとした悪寒が走る。

「もちろん、躯に決まっているだろ」

 そう言うと同時に、大和が指を抜く。

 俺は即座に大和がなにをするかを理解した。

 しかし理解したところで、とっさに動けるように脳が命令するより早く、大和の猛った欲情が俺を突き上げた。

「アアア────ッ!!」

 それは、もの凄い重圧と質量でもって、俺の中を侵略していく。

 二度目の洗礼というのに、躯を裂く痛みと恐怖に戦いた。

「ヤッ、ヤメロッ……痛いから……動くな……」

 それは自分で思った以上に、縋りつくような弱々しい声だった。

「そりゃ痛いに決まってるよ。乱暴にしているんだから」

 ほんの少し、大和の声のトーンが下がった気がした。

「どう……して……」

「あんたがわかっていないからだよ。誰が自分の主人かってことをさ。……だからお仕置き」

 そう言った瞬間には、いつものようにつかみ所のない笑みを浮かべていた。

 俺は初めてこいつが怖いと思った。まるで未知のものにでも出会ったような、そんな恐怖だった。

「お……俺は誰のものでもない。お前が主人なんて冗談じゃない!」

 声は微かに震えていた。
 それは俺の命一杯の強がりだった。

 クククッ……最初は小さな声だった。それがしばらく経たないうちに、アハハハハハハハハハッと大声で笑い出す。

「イイ、やぱっりいいよ、お兄ちゃん!! そうゆう鈍いところも、気が強いのもたまんねーよ」

 大和はヒィヒィと涙を流して笑っている。

「なにが楽しんだ!!」

 俺は先ほどの恐れなど吹き飛んで、目の前の馬鹿みたいに笑っている男に苛立った。

「だって……」

 大和が涙を拭って、笑いを納める。

「ここで捕まった時点で、お兄ちゃんは俺のモノになったんだって、わかんないかな?」

 俺は、その決めつけたような言い方に腹が立って怒鳴ろうとして口を開ける。

 その瞬間に、口を塞がれた。
 
 大和の口脣によって。

 それは貪るような、荒々しくて激しいものだった。舌の根が千切れそうなほどに強く吸われ、暴君のように俺の口内で彼の舌が暴れた。

 口脣が離れた頃には、俺は自分がなにを言おうとしていたのかも忘れていた。

「慌てるなよ。これからたっぷり教えてやる。なぁに、すぐに分かるさ。隆一が俺のものだってことがな」

 隆一と初めて大和は俺の名を読んだ。

 まるで俺の所有者とでもいうように。

 その独特の声と強さに、俺は背筋が凍り付いた。

 まるでなにかに縛らりつけられたように錯覚がして、ゾッとした。

 そして俺の名を読んだ大和の表情は、それまで見たどの顔とも違っていた。

 冷静で冷酷な瞳でジッとこちらを見ていた。

 それは圧倒的な強さを持つ、虎やライオンといった大形の肉食獣のような威圧感。

 喰われると本気で思った。

 


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