Real

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 あれから一週間が経ったが、隆一の行方は一向にわからないままだった。

 隆一の友人やバイトの仲間、疎遠になっていた親戚にも片っ端から連絡してみたが、連絡一つも来ていないと言われた。

 言葉も交わしたくないあの女にも会いにいった。

 電話ではまったく取り合わなかったからだ。

 足を使ってわざわざ会いに行ったというのに、得られたのは胸くそが悪くなるような隆一への愚痴と、反吐が出るような色目を使われた。

「ねえ、弟君の携番教えてよ。隆一から連絡あったら教えるし」

 この女から隆一の名前を呼ばれただけでも唾棄したくなった。

「誰が、てめーみたいな年増のドブスになんかに教えるかよ」

 そう吐き捨ててやると、醜い顔が更に醜くなった。

 隆一のやつ、女の趣味が悪すぎるぜ。

 結局のところ手がかりはゼロだ。今の俺は八方塞がりだ。

 まさか本当に自殺……。

 そんなことが頭に過っただけで、体中が絶対零度にでもいるように血の気を失う。

 いや、まだだ。

 隆一が自殺した証拠だって上がってこない。

 隆一がそんなに弱いはずがない。

 確証はなにひとつないが、そう強く念じていないと立っていられない。
  
 俺は隆一の部屋にいた。
 隆一がいつ帰って来てもいいように、綺麗に掃除して待っている。

「馬鹿……早く帰って来いよ」

 ベッドの前で膝まづく。
 もう随分、隆一の匂いも薄れていた。

 不意に携帯のベルが鳴って、飛び起きた。

 着信の表示はタツキからだった。俺は慌てて電話にでる。

 タツキからの連絡は待ちに待ったものだった。

「兄貴の居場所が分った? 本当か!?」

 体中の力が抜けるぐらい安堵した。やっぱり生きていた……。

 隆一が生きている────!

 それだけのことが震えるほどの幸福を与える。

 どんなに心に逆らっても、俺が一番大事なのは隆一だと思い知らされる。

 どれほど憎くて、どれほど恨んでも……やはり、隆一のいない人生なんて考えられない。

 良かった……本当に、良かった。

 兄さんが生きている。
 それだけで救われたきがした。

 目頭が熱くなるのを必死で押さえる。

『おい、司っ、聞いているか?』

「ああ……聞いている。それで隆一は元気なのか、どこにいるんだ!?」

『ああ……まあ、元気らしいな。見た目には怪我なんかはしていないようだ。俺が見たわけじゃねーけど』

 今まで気がつかなかったが、どうもタツキの歯切れが悪い。

 どんな時でも毒舌とポーカーフェイスは剥がれない男がだ。

 嫌な予感がした。

「それで、一体どこで見つかったって?」

 数秒の沈黙のあとタツキが口にした。

『大和のマンションから二人で出て来たのを確認したってさ』

 大和が……なんだって。

 どうして隆一を────。

 頭が真っ白になった。

『まったくあいつもよりによって一番面倒なのを……少しはこっちも迷惑も考えろっていうんだ』

 タツキの言葉は全く耳には聞こえなかった。

 大和が隆一と一緒にいる。

 答えは────
 一つしかなかった。

 隆一は大和に攫われたのだ。

 


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