トライアングル
 02

 長谷川の予約したのは、露天風呂付きの離れだった。
 通された部屋を見て天音は驚いた。

 そこはまるでホテルのスイートルームのような部屋だった。

 モダンなデザインで揃えられたインテリアは、リビングにソファーとテーブル。そして寝室には大人が三人は眠れそうな、キングサイズのベッドが二つ並べられている。とても和風の外見から想像できない内装だった。

「すごい、こんな豪華な部屋初めて」

 何もかも目新しいものに、天音は興味津々で辺りを見回った。
 外にはテラスがあって、そこから露天風呂にも行ける造りになっていた。

 落ち着きなく、あちらこちらと行き交う天音に、最初は呆れながらも笑っていた長谷川も、あまりに天音が腰を下ろさないので、たまりかねて首根っこを捕まえた。

「おい、いつまで待たせるつもりだ?」
「ご、ごめんなさいっ……」

「喜んでくれるのは嬉しいが、俺の存在をすっかり忘れられるのは流石に虚しいぞ」
「そんな忘れてなんか……」

 急に子供みたいに、はしゃいでしまったことが今更恥ずかしくなった。

「でも、あの露天風呂が凄く素敵でしたよ。外の眺めも綺麗だし、部屋に温泉があるなんて凄く贅沢ですね」
「そんなに慌てなくても、すぐにたっぷり堪能させてやるぜ」

 後ろから抱きしめられるように腕を回されて、天音は胸がドキドキした。

「それとも、誘ってんのか?」

 耳元で囁かれただけで、目眩がしそうになる。

「あの……温泉なら、早く入りたいです」

 それが温泉に浸かるだけじゃないってことは、天音にも分かっていた。

「へぇー、天音も少しは大人になったってことだな」

 長谷川は天音の上顎を掴むと、グイッと持ち上げた。
 俯いたままの長谷川の黒曜石みたいな瞳が、目の前にあった。鋭く艶やかに光る瞳に、天音は見蕩れてしまう。

 次第に大きくなる瞳を見つめているうちに口脣を塞がれた。

 きつく口脣を吸われて、強引に舌を差し込まれた。歯列を何度もなぞられて、荒く上顎を擦られると、膝に力が入らなくなる。

「天音の口脣は甘いな」

 口脣を離した長谷川がニッと笑った瞬間、天音の心臓が大きく跳ね上がる。
 
 ドクドクと早打つ鼓動が煩いほど耳につく。

 どうしよう……僕、こんな……長谷川さんにキスされただけで、すごく胸がドキドキして息苦しくて、躯が熱くなっちゃう……。

「天音、服脱がしてやるよ」

 長谷川の指が、シャツのボタンに触れる。
 肌に直接触れているわけでも、躯を撫でられているわけでもないのに、ボタンを外す微かな刺激が天音の肌を粟立たせた。

 シャツのボタンが全て外し終わる頃には、天音の躯は微かに震え、頬を上気させていた。

 次に長谷川の手がズボンに伸びる。

「ああっ……ダメっ……」

 その手を天音は掴んで止めた。

「なにがダメなんだ?」
「あのっ……僕、自分でするから……」
「いいから俺にまかせろ」

 しかし天音は首を振って、掴んだ手を放さない。

「別にもう勃ってるからって、恥ずかしがることはないだろ」

 ニヤリと長谷川は笑った。
 とたんに、天音は羞恥で顔を真っ赤に染める。気の弛んだ隙に、長谷川は天音のズボンを降ろした。

 ブリーフの中心が、なだらかな丘を作っていた。

「天音のパンツに、もう染みができてるぜ」
「いやぁ……見ないで……」
「見ないでって言っても……このままパンツ履いたままじゃ風呂には入れねーだろ」

 長谷川が下着を降ろすと、まだ未成熟な性器がプルリと揺れて現われた。

「天音のちんこは相変わらず可愛いな。それにピンクの先っぽが濡れてて、すげーいやらしい」

 天音は俯いたまま首を振る。

「いいって、隠さなくても。俺にキスされて、これから抱かれるって思ったら勃起したんだろ。可愛いぜ、お前」

 可愛いと言われても、羞恥がなくなるわけもなく、天音は長谷川の顔がまともに見れなかった。

 しばらく天音が俯いている間に、長谷川が自分の服を脱ぎ捨てた。  
 
 あっと言う間に裸になった長谷川が、天音を抱き上げる。

「わ、わっ……あのっ、僕自分で歩きます」

 急に視野が高くなり、足の付かない感覚に、天音は慌てふためく。

「ケガ人は大人しくされるがままになっとけ」

 軽々と天音を持ち上げたまま移動する長谷川に、天音もそれ以上拒絶はできなかった。ただ落ちないように首筋にしがみつく。

 風呂までの短い間、抱きついた長谷川の躯はとても逞しかった。
 長谷川の体格は、皇紀より縦も横もひとまわりほど大きい。そして首すじからはオリエンタルなフレグランスの匂いがした。

 初めて天音は長谷川が大人の男なのだと認識する。以前抱かれた時は、そんなことを考える余裕さえなかった。

 最初は未知の恐怖しかなく、薬を使われてからは、ただ圧倒的な快感と興奮と異常な高揚に始終身体も心も支配されて、なにも考えることなんてできなかった。

 皇紀とは三つほどしか離れていないはずだが、とてもそうは思えなかった。

 天音はその逞しい躯に、うっとりとしがみつく。その腕の中は、とても心地が良かった。


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