トライアングル

青年×少年 兄×弟
ショタ,3P


1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10

 01

 今日から三日間の連休で、天音は皇紀と一緒に長谷川のマンションに泊まりに行く予定だった。

 実は昨日の晩、天音はドキドキして、あまりよく眠れなかった。

 あの事件から十日、天音はまだ皇紀と一度もセックスはしていない。

 軽いキスと、性欲処理のようなしごき合いをするぐらいだった。
 傷は塞がったものの、まだ完全に治ったともいえず、皇紀は天音の体を気づかっているようで、天音は自ら欲しいとは言えなかった。

 あの時の後遺症か、天音は時折、躯が欲情して快楽が欲しくて溜まらなくなる。
 天音が自分で慰めたことは一度や二度ではなかった。

 あれほど残酷にいたぶられて、酷い目にあったというのに、快楽の記憶は躯に根を張ったように染み付いていた。
 薬を使われ、何人もの男を受け入れて、何度も絶頂を極めた。
 終わることのないような、永遠の快楽。それはどれほど忘れようとしても躯が忘れてはくれなかった。

 今、天音の躯は、酷く飢えていた。
 
 だから、今日ようやく長谷川と皇紀に満たして貰えるのだと思うと、興奮を止めることができない。

 皇紀に言われた時間の随分前から、天音は行く用意も終わり、皇紀が声を掛けてくるまでの時間を、もどかしいばかりに待ちわびた。
 ようやく皇紀が部屋を訪れると、天音は急かすように玄関へと向かいドアを開ける。

 だが、そこにいるはずのない長谷川の姿をみて、天音は唖然とした。

「どうして、ここに長谷川さんが?」
 
 てっきり長谷川は家で待っているものと、天音は思っていたからだ。

「よう、久しぶりだな天音」

 そう言ってクールに笑う長谷川に、天音の心臓は高鳴った。

「じゃあ、行くか」

 長谷川に手を引かれ、天音はわけがわからないうちに車に乗せられる。
 天音一人を車に乗せ、長谷川と皇紀はバイクに跨った。

 行き先も告げず走り出した二人に、天音はどこかとり残された気がして寂しくなった。
 運転手は前と同じ加賀谷で、天音はこれからどこに行くのか聞いてみた。

 しかし、加賀谷は『そのうちわかりますよ』とはぐらかすばかりで、教えてくれなかった。
 
 運転している加賀谷に話し掛けるのも悪い気がした。外ばかりを眺めていても、そのうち飽きて暇をもてあました天音は、ウトウトとまどろみ始めて、いつの間にか眠っていた。

 目が覚めると、辺りはすっかり緑に囲まれていて、ここが都市から随分と離れたことを知る。

 一体ここはどこなのだろう?

「もうすぐ着きますよ」

 加賀屋の言葉に天音は正直ホッとした。
 それから十分ほど行くと、和風の建物が見えてきて、その門の前に長谷川と皇紀のバイクが止まっていた。どうやら、天音が来るまで待っていたようだった。

 車が止まると、天音は慌てて飛び出して、長谷川のところまで走って行く。
 
「長谷川さん」
「遅かったな、随分待たされたぜ」
 
 開閉一番の言葉がソレだった。
 
「ご……ごめんなさい」
 
 天音は恐縮する。

「別に、お前に怒ったわけじゃねーよ」

 長谷川がそう言って笑ったので、天音の緊張が解ける。
 
「あの……ここは一体どこなんですか?」
「温泉だよ」

 思いもかけない言葉に、ただ驚いた。
 長谷川と温泉なんて全くイメージに合わない。

「まあ、お前の湯治と詫びも兼ねてな」
「湯治って?」
「知らねーのか? 温泉に浸かって病気や怪我を治すってことさ。まだ傷は治ってないんだろ?」
「えっと、でも傷口はもう塞がったから……」
「いいって、無理すんな。お前の傷がどれだけ治ったかは、あとでちゃんと見てやるよ。隅々までな」

 ニヤリと笑うその瞳の艶めいた光が、天音の心を細波み立てる。
 天音は頬が熱くなるのを止められなかった。

「もう興奮してきたか? 天音は随分エロくなったな」

 耳の傍で囁くように、長谷川が言った。

「ちがっ……そ、そんなんじゃないです!」

 天音は必死に否定する。長谷川に浅ましい自分を知られるのが嫌だった。
 
「なんだ、別に恥ずかしがることないだろ。自分から抱いてくれて言ったのはどこの誰だ?」

 長谷川はやけに楽しそうだった。
 天音は羞恥で耳まで赤くなる。

「まあ、いい。あとでたっぷり可愛がってやるからな」

 長谷川は笑って玄関へと向かう。
 天音は慌てて、長谷川の後を追った。




← / / 戻る / Top