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試練 03 省吾に連れて行って貰ったのは、今まで自分が食べたことのないような食材ばかりの高級中華だった。 アワビだのフカヒレだのA5ランクの牛肉などは、確かに美味しかったのだけれど、友里にはどうにも省吾に目を奪われて、あまり記憶には残っていなかった。 「これから君が接待する客達はいずれもハイクラスの人種だからね。こういう食事も慣れていく必要がある。 服や身なりもそうだが、礼儀やマナー、立ち振る舞いなども覚えて貰わないといけない。 それと最低でも英会話と経済の勉強はして貰う。私は君をただの枕営業なんてものにするつもりはないよ なに心配することはない。今の君の業務時間を裂いて受講に充ててもらう」 友里にとってはまるで夢のような現実味のない話だったが、これ以上省吾を失望させたくはなかった。 省吾が望むなら努力は惜しまないつもりだ。 食事が終わり、再び車に乗り込むと、車は友里の家とは逆の方向に向かっていた。省吾はこれから用があると言っていたはずだ。 「省吾さん。今からどこに向かっているんですか?」 友里はすごく嫌な予感がした。 「これから友里には一週間、ある場所で教育を受けて貰う。むろん、その間は会社の業務も休んで貰うことになる」 教育……それが何を意味するか、友里にも分かっていた。 「省吾さん……」 青ざめる友里の頬を、省吾は手入れの行き届いた、形のよい指でなぞる。 「お前にとっては少し辛い試練かもしれない。だが、友里ならきっとやり遂げられると私は思っている。君は私の期待に沿わなければならない」 友里にとって、それは絶対的な言葉だった。 「はい……」 まるで断罪を受けた虜囚より鬱々した表情に、省吾は苦笑する。 「たかが一週間だ。一週間堪えて、お前が全ての課題をクリアすれば、ご褒美をあげよう。むろん、お前が一番欲しがっているものだよ」 漫然と微笑む省吾はまるで悪魔のように優雅で美しかった。 「はい……」 悪魔のような男に見入られてしまった自分は、きっと永遠に逆らうことなどできないのだろう。 その魅力的な視線に釘付けになったまま友里は頷く。 そして、このままずっと目的地に着かなければいいという友里の願いもむなしく、30分も立たないうちに辿り着いてしまった。 車を降りた瞬間、見たことのある風景に、友里の躯は一瞬で強張った。 ここは省吾につれられて失禁ショーをさせられたあの店だった。 先に降りた省吾が入り口の前に立っている。早く彼の元にいかなければならないと頭では理解していても、躯が強張って動かなかった。 「どうやら私は少し急ぎすぎたようだね。まさか、君がこんなトラウマに感じているとは思わなかったよ。でも、大丈夫だ。君を連れて行くのはあの店ではないし、ショウにも立たせないと約束しよう」 省吾は車まで戻り、友里に手を差し伸べる。 省吾のその手は、思っていたよりもずっと温かかった。そのせいか、ゆっくりと固まっていた筋肉が緩んでいく。 おかげで車から降りることができた。 表向きは高級クラブだが、入り口のエレベターに乗り、カードを差し込むと、表示のされていない地下へと降りていく。 押しボタンはない。所持しているカードで降りる場所が決まっているようだ。 扉が開くと、異様な光景が目に入ってきた。 見目の良い男や女達は全員裸で、あるものは上から吊るされ、ある者は台の上で拘束され、ある者は全身を縄で絞められている。 共通しているといえば、彼らは皆首輪をつけられているのと、淫猥な行為を強いられていることだろう。 その多くは年端のいかない少年や少女で、逃げられないように拘束して、後ろから道具で犯したり、男の性器を銜えさせられたりしていた。 啜り泣きや、悲鳴、嬌声が部屋の中に響きわたる。 「やぁあっ…やぁああっ……やめてっ、許してっ!!」 「ひぃいいいっ……ごわれるっ……ぃぐう……あぅあああっ!!」 「やだっ……痛いっ……痛いよぉ……助けてっ、お母さんっ!!」 それは耳と目を塞ぎたくなるような、陰惨とした光景だった。 友里はとっさに省吾の腕を掴んだまま、その衝撃に動けなくなった。 ← / → / 戻る / Top |