呼び出し
 10

 ハァハァと肩で息をしながら、シーツにけだるげな躯を鎮める。
 次第に熱と快感の余韻がさめていくのを感じながら、友里は自分のしたことが恥ずかしくなった。

 あれほど省吾に責め立てられて、精を吐きだしたというのに、自分の躯はまだ貪欲に快感を欲しがっていた。

 友里は自分の躯が変えられたようで怖くなった。

 さっき抱かれたばかりなのに、また欲しくなるんなんて……まるで中毒みたいだ。

 それでも省吾に嫌というほど知らされた。
 もう、自分が男なしではいられない躯なのだということを……。

 省吾に抱かれるまでは、まだ自分の意志じゃないと、言いきかせることができた。

 しかし……。
 きっと再び省吾に求められれば、自ら望んで躯を開くだろう……。

 そんな自分に友里は戸惑った。 
 
 自分をこんな風にした省吾が憎いと思う。
 だが、なぜか憎みきれなかった。

 ふいに友里はテーブルの上のメモに気が付いた。

『明日、きょうと同じ時間に社長室で』

 達筆で美しい文字が刻まれたいた。
 なにをされるかは明白だった。

 ゾワリと寒気にも似た感じが。背筋を這っていく。

 まだ男に抱かれることに抵抗がないわけじゃない。
 嫌悪に近い感情があるのも確かだった。

 それでも友里はもう知ってしまったのだ。

 甘い官能という蜜の味を……。

 すべてを溶かしてしまうような、その濃厚な快楽の前では、どんな抵抗でさえも無駄だった。

 明日、また省吾に抱かれると思うと、奥が濡れてしまいそうな感じがした。

 

 その日、友里は朝から上の空だった。

 そのせいで午前中からミスが続いた。決定的だったのは、大事な商談の、時間の変更を伝えそこなったことだった。

「先方から別の用で連絡があったから分ったももの。ギリギリだったらしいからな、河野はカンカンだったぞ」

 友里は真田に呼び出されて、朝からのミスも含めて、説教をされた。

 言い訳すら出来なくて、ただ項垂れて話を聞く。

「申し訳ありません」

 頭を下げて、謝るだけだった。

「本当に反省しているのか?」

「はい……」

 言葉だけでなく、心から反省していた。
 仕事をよそに、省吾とのことを考えていたなんて、あってはならないことだった。

 だめだ……しっかりしないと。
 
 友里は自分自身を叱咤する。

「では、もう同じ失敗はしないように。それと、戻ってきたら河野に謝っておけよ」

「はい……」

 あまりにも友里が落ち込んで見えたのか、真田は励ましの言葉を掛けた。

「普段のお前は馬鹿が付くほど真面目だからな。今日は大目にみておいてやるよ。自分でも反省してるみたいだしな。だから、それほど落ち込むなよ」

 真田は気安く、軽く肩を叩きながら言った。

 心配してくれているのはありがたいが、それはど容易く、気持ちを切り替えることは出来なかった。
 
「よほど社長の労いが響いてるようだな」

 突然の真田の言葉に、友里はろうばいした。
 まさか……真田が昨夜のことを知るはずはない。

 とっさに恍ける事すらできず、友里は真田を凝視する。

「昨日一日で随分艶が増したな。社長に散々可愛がって貰ったんだろ」

 友里は動揺して、答える事もできずに青ざめていた。
 どうしてそれを真田が知っているのか、尋ねる事すらできなかった。

「また、そのうち俺の相手も頼むな。どんな風に社長に躾けられるのか、愉しみしているよ」

 真田はニヤリと笑みを浮かべると、友里を残して部屋から出て行った。

 

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