呼び出し
 18

「わかった……私が悪かった。お前に少し度胸をつけてやるつもりだったが、どうやらやり過ぎたみたいだな」

 なじられるとばかり思っていたのに、思わず優しい言葉を掛けられて驚いた。

「省吾……さん……」

 グスンッと友里は鼻をすすって、省吾を見つめる。

「褒美はなにがいい?」

「なにって……」

「我慢できたら、褒美をやるって言っただろう。友里が欲しいもの、なんでもくれてやる」

 突然そんなことを言われても、すぐには思いつかなかった。

 友里にとっては、ご褒美を貰えることより、省吾を失望させずに済んだことの方が嬉しかった。
   
「あの……本当になんでも構いませんか?」
「ああ、私に二言はないよ。なんでも言いたまえ」

 友里は言い出しにくいのか、少し躊躇っていた。

「あの……省吾さんが……欲しいです……」

 まるで乙女のように、恥じらいながら、最後は虫の息のような声だった。

 省吾は意表を突かれたのか、目を見張っていた。

 そして、破顔する。

「本当にお前は可愛いやつだな。そんなものでいいのか、出世だって、高級品だって望みのままだぞ」

 友里は首を振る。
 そんな自分に見合ってもいないものを貰ったところで、自分には手に余ることは分っていた。

「やっぱり……ダメですか?」

 浅ましい人間は嫌いだと省吾は言った。何でもいいと省吾が言ったから、今一番欲しいものを口にしたけれど、友里は急に怖くなった。

「私に二言はないといっただろう。友里が本当にそんなものでよければ、好きなだけくれてやる」

  省吾の言葉に友里の表情がパッと明るくなった。

「ありがとうございます」

 友里は少し頬を紅潮させて微笑んだ。

 省吾が部屋を取ったのは、最上階のスウィートルームだった。

 都会の夜景がまるでスクリーンでも見ているように、一面にパノラマが広がっていた。

 省吾がバスルームに入っている間、ルームサーヴィスでとって貰ったシャンパンを口につけながら、夜景を眺めた。

 友里は決して、少女趣味というわけではないが、美しいものを見るのは嫌いじゃあない。

 こんな豪華な部屋も、一時の夢だと思えば、楽しむこともできた。

「随分、夜景が気に入ったようだな」

 驚いて振り返ると、いつの間にバスルームから出て来たのか、ローブを着た省吾が立っていた。

「私にも、シャンパンをついでくれるかな?」    

 ローブの胸元ははだけていて、そこから逞しい胸板が見えて、友里はドキリとした。

 グラスに注いで、省吾に手渡す。

「あの……僕もシャワー浴びてきます……」

 そう言ってバスルームに向かおうとした友里の肩を省吾が掴んだ。

「別に構わん。さっき店で浴びてきたんだろ」

 確かにシャワーは浴びた。だが、失禁したことがショックすぎて、記憶が曖昧だった。

 せっかく省吾に抱かれるのだから、綺麗にしておきたかった。

「でも……」

「それとも友里は、私を一人で部屋で待たせる気か?」

 意地悪そうに省吾は笑った。

 そんなことを言われると、嫌だとは言えない。

 

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