Life

 03

「彬也……私はなにか嫌なことをしたのかな?」

「ちがっ……嫌なことなんて……ヒック……してない……」

 彬也の涙は止まることなく彼の頬を濡らしている。

「僕が悪いんだ……僕が汚いから……」

 そう呟くと彬也は、ひるがえしてその場から逃げ出そうとした。

 泰典は思わず彬也の手を掴んだ。

「それはどういう意味だ」

「やだっ、放してっ!」

 彬也は答えもせず、泰典から逃れようと暴れる。

「どうしたんだ彬也っ! 一体私ががなにをしたというんだ」

「お願い放してっ、僕に触らないでっ!!」

 ヒステリックに喚き、彬也は泰典の手から逃れようとする。

 そんな彬也を泰典は咄嗟に抱きしめた。

 こんな彬也を放っておけるはずがない。

「やだっ!! ダメっ、離してぇ――――っ!!」

 悲壮な声で彬也は叫んだ。

 そして、泰典は知ってしまった。
 彬也が拒絶する理由を――――。

「彬也……お前……」

「ううっ……うえっ……」

 彬也は小さな嗚咽を上げて、その場に崩れ落ちる。

「ごっ……ごめんなさい……ふぇ……ごめん……なさい……」

 彬也は泣きながら、そう謝った。

 抱きしめた時、彬也は勃起していたのだ。

 泰典はショックだった。
 これが自分のしたことの結果だった。

 泣き崩れる彬也が哀れで胸をつかれる。

 自分の罪がそう易々と償えるのもではないことを知った。

「彬也……」

 泰典はすまないと言う言葉を飲み込んだ。

 謝ったところで、なにひとつ罪を償えることはない。

 その変わりに、泰典は彬也を抱きしめた。

「お前が謝ることはない。彬也はないも悪いことなんてしないんだよ」

「お父さん……」

 彬也はようやく顔を上げ泰典を見つめる。

 その瞳は縋るように泰典に向けられていた。

「おいで」

 泰典はそう言って、彬也の躯を抱き上げる。

 泰典が向かった先は寝室だった。

 自分達がもう普通の親子に戻ることなどできないのだと知って、泰典は覚悟を決めた。

 ベッドの上に下ろされて、彬也はこれから自分がなにをされるのか理解したようで、かなり動揺しているようだった。

「嫌だったら言いなさい」

「おとうさ……」

 そう言いながら、泰典は彬也がなにかを口にする前に、口唇を塞いだ。

 その柔らかな口唇は、堪らなく甘美だった。

 触れて、自分がどれほど飢えていたのかを知った。

 今更欲望にまみれた自分が、良い父親になろうなんて、所詮分不相応の望みに過ぎなかったのだ。

「彬也……」

 柔らかで甘い口唇を、泰典は夢中で味わった。

 それは今まで交わしたどんな口づけよりも甘くて酔いしれた。

 何度も舌を絡ませて、その小さな舌に吸い付いた。

 口唇を話すと唾液が糸を引いた。

 もう一時も我慢できないという風に、泰典は性急に彬也の服を脱がせようとする。

「ダメっ、やめてお父さんっ!」

 シャツのボタンを外す、泰典の手が止まった。


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