夏休みの日記

 14

 8月6日 日曜日 晴れ

 その日は朝から雲ひとつないぐらいの青空でした。

 だけど、僕の心は沈んだままです。

 朝食を食べ終わって、おじいちゃんが博物館に行くかと聞いてきたけど、僕は行きたくないと言いました。

 そんな気分ではなかったのです。

 それよりも僕は今日こそ、おじいちゃんが一緒にお風呂に入ってくれるかということが、ずっと気になってしょうがありません。

「ねえ、今日は一緒にお風呂入ってくれるでしょ?」

 僕がそう言うと、おじいちゃんの顔が強張りました。

 そして信じられないことを、おじいちゃんは言いました。

「じいちゃんは、もう篤とは一緒にお風呂は入らんよ」

「どうして!!」

 おじいちゃんが僕を拒絶するようなことを言うなんて、信じたくありませんでした。

「もうオナニーの仕方は十分覚えただろ。だいたいあんなものは一人でやるもんなんだからな」

 僕は突然のことにとても頭が混乱しました。

「嫌だよ、一人でなんか全然気持ち良くないもん。おじいちゃんにして貰うのがいい」

 おじいちゃんはいつも僕の我侭を聞いてくれます。だから、今度だって聞いてくれるはずでした。

「ダメだ。こうゆうことは普通恋人とするもんだ。だから、じいちゃんはもう篤と気持ちいことをするのは止める」
 
 おじいちゃんは怖い顔をしたまま言いました。

「何で? どうして急にそんなこと言うの? おじいちゃんはもう僕のことが嫌いなの? だから嫌なの?」

 僕は悲しくなってきて、目頭が熱くなって、鼻がツンとしてきました。

 するとおじいちゃんは怖い顔から困った顔になりました。

「違うよ、篤。じいちゃんは篤が大好きだから、もうしないんだよ」

 僕はおじいちゃんの言っていることがよくわかりません。好きだったら、どうして僕が欲しいものをくれないのでしょう。

「嘘だ。おじいちゃんは僕が嫌いになったんだ。だからしてくれないんだ!」

 僕が責めると、おじいちゃんは増々困った顔をします。

「じいちゃんが、篤は嫌いになるわけないだろう」

「だったらして。気持ちいいのして。僕はおじいちゃんに触って欲しいんだ」

 おじいちゃんの眉間に深いシワが刻まれます。

「篤がなんと言おうが、ダメなものはダメだ」

 僕を見るおじいちゃんの強い目の光に。おじいちゃんの意思は強く、変わらないことは僕にも理解できました。

「じゃあ、なんであんなの教えたの? こんな風に放っておかれるなら、なにも教えてくれない方が良かった!」

 僕の頬に温かい涙が伝いました。
 僕の言葉におじいちゃんはがっくりと肩を落し項垂れて、すまないといって頭を下げました。

 僕はなんだかどうしようもなく苛立っていました。

 こんな格好わるいおじいちゃんは、僕の大好きなおじいちゃんじゃない。

「おじいちゃんなんて大嫌いっ!」

 僕はそう吐き捨てて居間から出ていくと、僕は自分が使ってる部屋の布団の中に潜りこみました。

 おじいちゃんに腹が立つのと、もう触れて貰えない寂しさと、傷つけてしまった苦しみ。

 いろんな感情が僕の心に吹き荒れます。

 どうしていいかわからずに、僕はただ布団の中で泣きました。

 泣いて泣いて、ずっと泣いて、いつのまにか疲れて寝てしまいました。

 


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