Real

 14

「だったら、何なんだっていうんだ。正義感きどりで弟に報復された俺を馬鹿にしに来たのかよ! この通り、体も心もボロボロだ。お前らからしたら、ざまあ見ろだろ。笑いたけりゃ笑えよ。それで、とっとと帰ってくれ!」

 もう散々嬲ったくせに、あれだけでは足らないと言うのか!?

 また胸がちりじりになりそうだった。

 あれだけでは足らないぐらい、俺は司に憎まれているということか?

 どうしようもない切なさと空しさに襲われる。

 いくら後悔したところで、過去には戻れない。
 
 俺は司を永遠に失ったのだと知った。

「そんな顔で泣くなよ……」

 いきなり抱き締められていた。

 泣いてる……俺が……?

 俺は自分が泣いていることすら気づかなかった。

「笑いになんて来てねーよ。あんたのこと心配になって様子を見に来ただけ」

 悔しいことに、大和の胸の中にすっぽりと納まっている。

「放せよ! なんでお前が俺を心配するんだ」

 俺は大和を突き放そうとしたが、後ろに回された腕は、ビクリとも動かない。

 どうやらこの年下の少年に、体型だけでなく、腕力も圧倒的に負けているようだった。

「知りたい?」

 大和は嬉しそうにニヤリと笑う。それは悪戯をする子供のような笑みだった。

 俺はその顔をみたとたん、なぜか居心地の悪い気持ちになった。

「別に……お前のことなんて知りたくもない。用がないなら早く帰ってくれ」

 じっと真直ぐに向けてくる眼差しが嫌で視線を背けた。

 そのとたんに、口脣になにかが触れる。

 それが口づけなのだと知ったとたん舌まで入れてきた。生暖かい感触のソレが粘膜をなぞる。

 気持ち悪さと同時に、あの時の官能を思い出す。

 大和の口づけは、経験の少ない俺にでも、手慣れたものだとわかる。

 嫌だ……この感じは……。

「やめろっ!」

 大和の手が弛んだ隙に突き放す。

「なにするんだっ!」

「なにって、たかがキスぐらいでそんなに怯えることないだろ?」

 たかがキスというには、あまりに濃密だった。

「やっぱり可愛いな、お兄ちゃんは」

 楽しそうに笑う大和を俺は睨みつける。

「わざわざ、こんなことをする為にきたのかよ」

「まあ、俺としてはお兄ちゃんさえよければ、お相手するんだけど?」

「冗談じゃねぇ!」

「残念。まあ、そう言われるとは思っていたけど」

 大和はそう言って肩をすくめてみせた。

「俺がここに来たのは、お兄ちゃんを呼びにきたんだよ」

 俺は眉を潜めた。大和の言葉には肝心なことが抜けていた。

 誰が……なんの為に?

「言わなくても分かるだろ? どうしてかは、向こうに行って聞いてくれ」

 ただ使いを頼まれただけ、という素振りを大和はする。

「別に行きたくないならそれもいいぜ。無理矢理にでも連れてこいとは言われてないし」

 一体、どうゆうつもりなのだろう……?

 司はもう二度と俺とは関わりたくないのだと思っていた。

 それとも俺はまた試されているのだろうか?  

 まだ俺にチャンスは残されているのか?

「わかった、連れていってくれ」

 俺は一縷の望みに賭けることにした。


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