Real

 16

「どんな時代の偏見だよそれ……。マッチョの兄貴が好きとか、最近の若いやつじゃあんまり聞かないぜ。俺らの中でも、タツキぐらいかな。あいつは自分より強そうな男をヒイヒイ泣かせて犯すのが大好きっていうド変態だからな」

「……そう…なんだ」

 なぜか見てはいけない世界を覗いた気持ちになった。

「ちなみに、俺の好みはお兄ちゃんみたいに、スレンダーでちょうど俺の胸に納まるぐらいが好みだぜ。それでもって生真面目で気が強いくせに少し脆い感じとか、めちゃくちゃ好きだな」

 大和の好きなタイプなんて聞きたくない。俺は少し苛立ち始めていた。

「そんなことより、司はいつ来るんだよ」

「さあ、もうすぐ来るんじゃねーの」

 大和はそっけなく、そう答える。

 一瞬、なにか違和感を感じた。

 なにかおかしい。

 どうして司は話をするのに、わざわざ大和の部屋に呼び出したりしたのだろう。

 話があるなら家にくればいいだけの話だ。どうせ両親はろくに帰ってくることもないのだから。

「おい、本当に司は……」

 言いかけて頭がクラクラした。

「なん……だ。これ……」

 目が回って……意識が……混濁する。

「大和……お前……」

 もう、舌が回らない。

「わりぃーな、おにーちゃん。いつまで待っても司はこねーよ」

 やっぱり騙されたのだと知っても、俺の意識は混濁するばかりだった。

 逃げなければと、それだけ思いながら、俺は次第に意識を失っていった。

 ***

 頭が痛かった。
 まるで脳みそが石にでもなったように重く、絶えず鈍い痛みが襲っている。

 腕は痺れるているみたいに感覚がない。

 両手は後ろに回されて、背中の下に敷かれている。

 そして躯に感じる違和感。

 なにかが俺の中を掻き混ぜている。

 ヌチュヌチュと濡れ立つ音が響く。

 この感覚を、俺は知っていた。

「そろそろ、お目覚めか。お兄ちゃん」

 耳元で囁くような声がした。

「んんっ……」

 目蓋が酷く重い。

「お兄ちゃんの躯を弄るのも愉しいけど、やっぱり一人じゃ寂しいぜ」

 ネトリとした温かなものが耳の中に入れられた。

 ピチョと不快な水音がやけに大きく聞こえる。

 その生理的嫌悪に、俺の重い目蓋が一気に開く。

 目を醒ました俺の目の前にあるのは、整った男の顔だった。

「……やま……と?」

「そう、俺。お兄ちゃんの新しい恋人」

 にっこりと微笑んで大和が言った。

 


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