Real

 25

 古びたマンションの一室。

 簡易ベッドに粗末なシーツ。関節照明でボンヤリと照らされた室内は、安物のソファーとテーブルが置かれている以外なにもない狭い部屋だった。

「アアッ……ヒィイ……もっとっ……奥ッ……アァアッ!」

 四つん這いにして、犯している男が淫猥に尻を揺らし、快楽を貪っている。

 俺は男の尻に肉棒を突きさし、望むどおりに奥の奥までガツガツと掘る。

「イイッ……アァアッ!!……クルぅ……ひぃいいいっ!!……クルぅ〜〜〜ッ……!!」

 男の腸壁が更にキツク締まり、激しく蠕動するのと同時に、精を放った。

「アァアアア────ッ!!」

 男の一際高い嬌声に、同じ様に達ったのだと知る。

 すっかりと男の中に吐精すると、急激に欲情していた熱が引いて行く。

 性器を取り出すと、コンドームを剥ぎ取り、事務的に汚れたペニスをティシュで拭き取った。

 その汚物をゴミ箱に投げ捨て、下着とジーンズを身に付ける。シャツはもともと脱いではいない。

「もう帰るのかよ」

 そう呟いた男は憂いた瞳に、媚びた眼差しを浮かべている。

「ああ」

「なあ、コレっきりってホント? 結構俺ら躯の相性良かった思うんだけど、メアド交換しね?」

 反吐が出そうだった。

「ただの性処理に相性もクソもねーな」

 俺はそう言って部屋を出た。
 ヒステリックに男がなにか叫んでいるが興味はない。

 マンションを出るとバイクに乗った。

 連れ込み宿で、最低のセックス。
 気分は最悪だった。

 時計を見ると深夜の一時を少し回っている。
 しかし、このまま寝る気にはどうしてもならない。
 俺は行き先を行き着けのバーへと向けた。

 そのバーの扉には『EXIT』と書かれている。
 ふざけたバーの名前だった。

 店の中に入ると、意外と混んでいた。

 と言っても、カウンターとボックスは2つほどのさして大きくもない店鋪だ。混んでいるといってもたかがしれている。

 カップルが四組とシングル客が二人。その内、顔見知りは二人ほど、いずれも今夜は連れがいるようだ。

 俺はカウンターの席に座ると、マスターにいつものと注文した。

 すでに俺が店内に入ってきた時から、用意していたのだろう。

 ローストしたナッツとバーボンのロックが差し出された。

 俺はグラスの中の琥珀色の液体を口の中に流し込む。

 咽の奥の焼け付く感じに少しホッとする。

 最近の俺はセックスと酒に浸り切っていた。

 気を抜くと襲ってくる兄の痴態と、俺はずっと戦っていた。

 あれは兄への復讐と凝り固まった執着への決別だったはずだった。

 ずっと俺を苦しめてきた兄が憎くて、辛くて、行き場のない想いが苦しくて。

 俺のことなど放っておいてくれれば良かったのに……。

 隆一にはきっと一生分からない。

 あんたが俺の為だと自分の正義を押し付けてくるほど、追い詰められていく俺の心に。

 世間からはみ出された人間の気持ちなんて、やつには絶対わからない。

 俺だって喜んでゲイになったわけでも、自分の兄を好きになったわけでもないんだ。

 俺は再び、酒を煽った。

 


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