Real

 27

 酒を煽りながら、アルコールが脳細胞を殺してくるのをただ待っている。

 なにもかもがどうでも良かった。
 この苦しい記憶を消してくるものならなんでもいい。
 
 セックスでも酒でも薬でも……。

 誰か俺をこの苦しみから解放して欲しかった。

 俺は自分の傷心に浸りきっていて、店のドアが開いたのも気がつかなかった。

「ようやく、捕まえた」

 肩を叩かれて、振り向くとタツキだった。

「ってか、酒くさっ」

 人の顔を見るなり、怪訝に眉を顰める。
 
 俺は面倒な人間の登場に思わず、チッと舌打ちをする。

「なんだよ、失礼なやつだな」

 屁とも思っていないくせに、嫌味ったらしくそうほざく。

「何の用だ?」

「挨拶のひとつもなくそれかよ」

 呆れたようにタツキは肩を竦めた。

「見てのとおり機嫌が悪い。用がないならとっとと消えろ」

 タツキはハァ〜とこれ見よがしの溜め息をついた。 

「大和とはまったく連絡がつかねーし、ようやく見つけた司はアル中だし、全くウチのトップのワンツーはどうなってんだか」

「誰がナンバーツーだ。勝手に人をナンバーツーなんかにするな」

 大和はともかく、俺はナンバーツーなんかになった覚えはない。

「なに言ってんだよ。あれだけ大和と肩並べて、好きなだけ暴れてたヤツはだれだっけ?」

「別に。絡んできたヤツにやり返してただけだろ」

「容赦なく叩きのめして、バンバン顔売っていながらよく仰る。高階の大和と司と言えば泣く子も黙るニ枚看板だって、この辺りじゃあ有名な話だぜ」

「それでもって、大和や司よりタツキを怒らせるな。タツキを怒らせたヤツは闇に葬られるって影でひそひそと噂されてるらしいな」

「いやだなぁ〜、俺のはあくまで噂だろ、噂」

 誰も表立って言えないから噂なのだ。
   
 なにしろ俺だって、タツキに目を付けられた男がヤツの奴隷になったのを片手ぐらいは知っている。

 自分の倍もあるような男を、散々に責め苛んで、泣きすがり屈服するまで調教するのだ。それを見たら誰だって怖くて逆らえないだろう。

「下らない嫌みはいいから、用件は?」

 タツキに口で勝てる訳もなく、薮蛇になる前に会話を終わらせる。

「なんだよ。コミニュケーションは大事だぞ、司」

 お前のコミュニケーションなんて怖すぎて誰も交わせない。

「急いでいるんだろ」

 俺のその言葉にタツキはようやく表情を変えた。

 


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