Real

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 まあ、だからこそ卑怯な真似もできるってか。

 捕まっていた俊哉は手足を縛られた上に裸にされていた。

 人質を取った上に、抵抗できない人間を嬲るなんて、最低のろくでなしだ。

 こいつらに手加減をしてやる必要はない。 
 
 俺は目の前の雑魚の鳩尾に一発喰らわせて、次の獲物を値踏みする。

「さあ、次ぎは誰だ。誰でもいいから掛かって来な」

 犬でも呼ぶように挑発的に手招きする。ニヤリと笑ってやると、俺の前の三人の男は一様に動揺した。

 喧嘩する前からビビっているようではお終いだ。

 ハッタリもできないようでは勝負にならない。

 喧嘩を吹っ掛ける相手を間違えたお前らの愚かさを、精々教え込んでやろう。

 俺は拳を握り、目の前の男達に飛びかかった。

 ******

 男達の悲鳴も、躯に感じる痛みもどこか遠くのことのようだった。

 ただ、血だけが熱く沸騰して、頭の中は真っ白で、酷く興奮していた。

 それはどこかドラッグにも似ていて、やはりなにかが決定的に違っていた。

「おい、止めろって!」

 気がつくと後ろから羽交い締めにされていた。

「もう十分だ。てーいうか、やり過ぎだろ」

 俺の拳は血まみれだった。

 数人の男が芋虫のように床に這いつくばっていた。どいつも血まみれで、俺から逃げようとしていた。

「そろそろ引き際だろ」

 タツキの言葉で我に返る。

 回りを見渡すと、敵は誰一人立ってはいなかった。
 
 すでに俊哉の救出も終わっていた。

「ああ、そうだな。そろそろ引き上げるか」

 寂れた倉庫から外にでると、裕志と俊哉の二人が待っていた。

「あの……ありがとうございます」

 頭を下げる二人が顔を上げたとたん、怯えた視線が見てとれた。

「別に……暴れたかっただけだ」

 どこか二人の視線が兄のものと重なった。

 先に視線を逸らせたのは俺だった。

「でも、司さんがいなかったら、あいつらに勝てませんでしたから」

 あんな根性なしに負けるとは思わないが、確かに数だけは揃えてはいた。

 再び頭を下げる二人に、不用だと軽く手を振って背を向けた。

 決して彼らの為に戦ったわけではない。礼など言われる必要もない。

 バイクに乗り込もうとする俺を引き止めたのはタツキだった。

「そんな格好で走るのか」

 そう言って、タオルを投げてよこした。

 血まみれの手と服を拭う。

「なんか、昔のお前に戻っちまったみたいだな」

 確かに最初に大和とタツキと会ったときも、俺は酷く荒んでいた。

 しかし、まさかタツキからそんな事を言われるとは思ってもいなかった。

「そういやお前を捜してた時、実家に電話したら、おばさんからあの兄さんが失踪したって聞いたぜ。お前だって居場所なんか知ってるわけねーよな?」

 一瞬、頭が真っ白になった。

 失踪……?

 隆一が?

 サッと躯中の血液が失せていく気がした。

 


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