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Real 30 まあ、だからこそ卑怯な真似もできるってか。 捕まっていた俊哉は手足を縛られた上に裸にされていた。 人質を取った上に、抵抗できない人間を嬲るなんて、最低のろくでなしだ。 こいつらに手加減をしてやる必要はない。 「さあ、次ぎは誰だ。誰でもいいから掛かって来な」 犬でも呼ぶように挑発的に手招きする。ニヤリと笑ってやると、俺の前の三人の男は一様に動揺した。 喧嘩する前からビビっているようではお終いだ。 ハッタリもできないようでは勝負にならない。 喧嘩を吹っ掛ける相手を間違えたお前らの愚かさを、精々教え込んでやろう。 俺は拳を握り、目の前の男達に飛びかかった。 ****** 男達の悲鳴も、躯に感じる痛みもどこか遠くのことのようだった。 ただ、血だけが熱く沸騰して、頭の中は真っ白で、酷く興奮していた。 それはどこかドラッグにも似ていて、やはりなにかが決定的に違っていた。 「おい、止めろって!」 気がつくと後ろから羽交い締めにされていた。 「もう十分だ。てーいうか、やり過ぎだろ」 俺の拳は血まみれだった。 数人の男が芋虫のように床に這いつくばっていた。どいつも血まみれで、俺から逃げようとしていた。 「そろそろ引き際だろ」 タツキの言葉で我に返る。 回りを見渡すと、敵は誰一人立ってはいなかった。 「ああ、そうだな。そろそろ引き上げるか」 寂れた倉庫から外にでると、裕志と俊哉の二人が待っていた。 「あの……ありがとうございます」 頭を下げる二人が顔を上げたとたん、怯えた視線が見てとれた。 「別に……暴れたかっただけだ」 どこか二人の視線が兄のものと重なった。 先に視線を逸らせたのは俺だった。 「でも、司さんがいなかったら、あいつらに勝てませんでしたから」 あんな根性なしに負けるとは思わないが、確かに数だけは揃えてはいた。 再び頭を下げる二人に、不用だと軽く手を振って背を向けた。 決して彼らの為に戦ったわけではない。礼など言われる必要もない。 バイクに乗り込もうとする俺を引き止めたのはタツキだった。 「そんな格好で走るのか」 そう言って、タオルを投げてよこした。 血まみれの手と服を拭う。 「なんか、昔のお前に戻っちまったみたいだな」 確かに最初に大和とタツキと会ったときも、俺は酷く荒んでいた。 しかし、まさかタツキからそんな事を言われるとは思ってもいなかった。 「そういやお前を捜してた時、実家に電話したら、おばさんからあの兄さんが失踪したって聞いたぜ。お前だって居場所なんか知ってるわけねーよな?」 一瞬、頭が真っ白になった。 失踪……? 隆一が? サッと躯中の血液が失せていく気がした。
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