Real

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「司っ、お前大丈夫かっ!」

 フラリと立ち眩みを起こす。

「それで……あいつはいつからいなくなったか言ってたか?」

「ああ、二週間前からだってさ。大学にも行ってないらしいぜ」

 二週間……ふらりとどこかに出かけるような長さではない。

 まさか、自殺────。

 まるでギュッと絞られているみたいに心臓が痛くなった。

「お前、顔色真っ青だぞ」

 まさか、隆一にかぎって自殺なんかするはずない。

 いや……同性愛をあれほど嫌悪していたのだ。

 あんな何人もの男に犯されて、平然としていられるわけがない。

 もし……隆一が自殺したなら、殺したのは俺だ。

 俺が隆一を殺した?

 全身の血が失せたように、ゾッとするほどの寒気を感じた。

 まるで真冬の夜に冷たい海の中に放り込まれたような恐怖。

「おい、司っ! 聞こえてるのかっ!」

 隆一がいない……。
 俺が殺した……。

 俺の根底が崩れていく。

 全てが暗闇に包まれていくような気がした。 

「おい、しっかりしろっ!」

 頬に激しい衝撃と痛みを感じた。

「なにも兄貴が自殺したって決まったわけじゃねーんだろ。もしかして、なんかの事件に巻き込まれたかもしれないんだ。お前がそんなに動揺してどうなる」

 タツキの声にハッと我に返る。

 そうだ、まだ隆一が死んだとは限らない。

「どうやら目が醒めたようだな」

「ああ、悪かった」

「お前もまだまだガキだな」

「タツキに比べたら皆ガキだろう」

「そうゆう意味じゃねー。自分でしでかしたことのケツも拭けないようでは、まだまだ半人前ってことだよ」

 返す言葉もない。

「そんなに執着してんなら、自分で犯せば良かっただろうが。わざわざ俺等に犯させるなんて趣味が悪い」

 と言いながら、俺自身は愉しかったけどなとタツキは付け加えた。

「あれは、そうゆうんじゃねーんだよ」

 隆一を抱いたりしたら、余計に執着は増すだろう。あれは、執着を断ち切る為の儀式だったのだ。
   
 なにもかもブチ壊して、お終いにするはずだった。

 まったくもって大失敗だったが。

「ったく、お前はどうしようもなく馬鹿だな」

 本当に、自分でもこんなに馬鹿だとは知らなかった。

 自嘲する俺をタツキは呆れたように見る。

「しょうがねー兄貴の居場所、俺も捜してやるよ」

「どうゆう風の吹き回しだ?」

 タツキはお節介だとか人の世話を焼くような人間ではない。

「ちょっとな、俺も気になることがあるんだよ」

「俺の兄貴のことがか?」

「いや別方向でだが、もしかして繋がってるのかと思ってな」

 タツキの言っている意味が良く分からない。

「なんだ、それ」

「今はただの憶測だからな。余計なことは言わないことにする。ただはっきりしらた連絡する」

「ああ、頼む」

 タツキの情報網は広い。外国の政治から地元のローカルネタまで、どうゆう経路か知らないが仕入れてくる。

 いざって言う時、情報っていうのが一番重要になってくるんだぜ。というのがタツキの持論だ。

 いざとなれば、やはり頼りになる男だった。

 俺は久しぶりに、自分の自我が覚醒していくのを感じていた。

 


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