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Real 58 震える指をどうにか抑え込む。 兄が…隆一が、俺を嫌っていなかったと知れただけで、ずっと突かえていた胸の苦しみがすっと溶けていくようだった。 長きに渡ってそれは俺を苦しめていた。 愛しているからこそ、もう永遠に隆一の愛が得られないのだと知った瞬間、全てのことに絶望した。 それが苦しくて……苦しくて……。 愛してくれない隆一に憎悪を感じた。 あれほど憎いと思っていたのに。 憎しみは春を迎えた雪のように解けてしまった。 そして後に残ったは、切ないほどの恋心。 最悪なのは、それが隆一にとって重荷でしかないことだ。 隆一が幸せになってくれればそれでいい。 本心でそう思ってる。 ……それなのに。 このえぐるような胸の苦しみが……痛みが……今すぐ、隆一の後を追って捕まえたいと訴える。 最後に見せた兄の表情が忘れられない。 俺と同じように傷ついた顔。 どうしてそんな顔をするんだ。まるで、俺から離れたくはないというような……。 いや、そうじゃない。 分かってる……分かってるんだ。 だが……。 そう、この恋心だけはまだ当分手放すことは出来ないだろう。 この胸の痛みと共に────。 *** どれぐらいそうしていたのかわかからなかった。 「おい、あんまり遅いから迎えに来たぞ」 声がしてようやく自分がここにいることを思い出す。 「お前の家は、もうココじゃないだろう」 まるで擦れたガラスのように思考がぼんやりしていた。 酷く何もかもが面倒でどうでもいい感じだ。 「俺と約束しただろう?」 俺は大和と交わした約束を思い出した。 「ゴメン…俺……」 大和が現れるまですっかり約束のことなど忘れていた。 「帰るぞ」 大和がメットを放り投げる。俺はそれを受け取った。 そうだ。俺はもう大和の手を取ったんだ。 司には司の人生があるように、俺もまた自分の人生がある。 一度溢れてまった水が戻らないのと一緒で、二人の関係か元に戻ることは決してないのだ。 大和のバイクに乗って、その背中にしがみつく。大和から感じる体温がやけに温かくて心地がよかった。 いつかはひとり立ちしなければならないのだ。それが少しばかり早まっただけだ。 そう思うのに、ココロをじくじくと寂寥感が蝕んでいく。 この痛みも、いつかは消えて無くなるのだろうか? そうであればいいと、俺はじっと噛みしめるしかなかった。
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