看病

 02

「いや、きっと圭くんを狙っているに違いない。親切そうな顔をして、俺の可愛い圭くんをたぶらかすつもりなんだ。そうだ、そうに違いない! ダメだよ、圭くん。あんなやつに騙されたら、男はみんな狼なんだからね!」

 いや、お前が一番狼だろうが……違うな、自分の息子に手を出すぐらいだからそれ以下だ。

 なにしろ獣なら自分の息子を襲うことなんてないからね。

「ねえ、なんか良平顔赤いよ。また熱上がったんじゃない。ちゃんと熱は計ったの?」

 そう言えば、なんだか本当に具合が悪そうだった。

 きっとくだらない妄想ばかりしているからに違いない。

 するとちょうどピピピと電子体温計の音がなる。

 とりだすと38.5℃の表示だった。やっぱり、ちょっと上がったみたい。

 やたら良平が絡むのもそのせいなのかもしれない。

「やっぱりパパはもう死んじゃうんだ……」

 いや、だから38度ぐらいの熱じゃあ死なないから!

「圭くんは、こんな辛そうで寂しそうな俺を置いて、学校なんかにいっちゃうの?」

 熱のせいで潤んだ瞳で、俺を見つめる。

 良平は俺の手をギュッと握った。

「いっちゃヤダ。行かないで圭くん……」

 まるで捨てられた子犬のような眼差しだ。

 俺は本当はわかっているのだ。
 これが良平の手なのだと。
 いつも、こうやって甘えれば俺がほだされて言うことを聞くと思っているのだ。

 本当にろくでなしの親だ。

「わかったよ。学校に連絡する」

 俺は肩を落し、降参した。
 
「言っとくけど今日だけだからね」

 すると、さっきまで死にそうだった顔が、パッと綻ぶ。

「やった〜、今日は圭くんと一日中一緒だぁ〜〜っ!!」

 はしゃぐようなセリフだが、やはりいつもみたいな元気はない。

「ちゃんと側にいてあげるから、 もうちょっと寝た方がいいよ」

「じゃあ、このまま手を握ってて」

「なに子供みたいなこといってんの」

「だって子供だもん。体は大人、頭脳は子供、その名も圭くんの最愛の恋人良平くんデッス!!」

 痛い……痛すぎる。
 それを胸はって言う35才ってさ……。 

「ハイハイ……わかったから、良平が寝るまでこのままにしておくよ」

 言い出したら聞かないのだ。
 それに病気で滅入っているのも   
あるだろうし……って、俺はホントに良平に甘いな。

「絶対、絶対、放しちゃだめだからね!」

「わかったから、もう寝なよ」

 ようやく安心したのか、良平は目を瞑った。

 本当は、大分具合が悪かったのだろう。あまり時間も立たない内に、良平の呼吸が落ち着いたものになった。

 さて、俺も学校に電話しなきゃと思ったら、良平の手があんまりにもしっかり握っているものだから離れない。

 無理矢理ひっぱったら、起こしてしまいそうで忍びなかった。

「まあ、もうちょっとこのままでもいいか」

 眠ってる良平は静かなものだった。

 


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