看病

馬鹿父親×しっかり息子
おみやげ続編,ショタ,コメディ


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 01

「圭くん……おとーさんはもうダメかもしれない……」

 ゲホゲホと激しく咳き込んで、息も絶え絶えに良平は言った。

「お父さんは、圭くんを立派な大人に育てるっ神様に誓ったのに……それも、もう果せそうにない……」

 潤んだ瞳でしっかりと俺の手を握りしめて良平は俺に訴えかけてくる。

 ちなみに良平はクリスチャンでもなんでもなく、確か家は真言宗で、無神論者だ。 

 それに立派な大人になるまでに、早々と自分の息子に手を出したくせによく言う。

「わかったから、もう学校行ってもいい?」

「なんでっ! 圭くんの大事なパピーでラバーの俺がこんなに苦しんで今にも死にそうなのに、こんな俺を放って学校なんてよくいけるね!」

 いや……そんだけ元気にしゃべれたら大丈夫だと思うぞ。

「もし、俺が死んだら圭くんは死目に会えないんだよ、それでも学校に行くというのっ!!」

 ああ……なんか、突っ込むのも面倒なんですが……。

「たかが風邪ぐらいで大袈裟なんだよ。昨日お医者さんだって、薬のんでゆっくり寝たら治るって言ってただろ」

 っていうか、思い出したよ。
 付き添いで病院についていかされて、注射がイヤだと散々ごねて、最終的には怖いから手を握っててくれと言われたのだ。

 あの時の看護婦さん達の笑い声を思い出しただけでも、顔から火が出そうだ。

「だって、あの医者ヤブだもん。注射が嫌だっていうのに、しやがるしぃー」

 良平は頬を膨らませてふてくされていた。
 お前は、子供かっ!

「注射の方が速効性があるんだから、しょうがないだろ。いつまでも仕事休めるはずもないんだし」

「注射するぐらいなら、仕事休んだ方がマシ!」

 その発言は社会人としてどうよ?
 
「良平はそれでよくても、会社の人はそうでもないだろ。後藤さんも大分疲れてるみたいだったし」

 後藤さんは良平の部下だ。
 昨日、見舞いに来てくれて、ご飯まで作ってくれた良い人だ。

 家が父子家庭なのを知っていて、仕事も忙しいのに心配して、わざわざ来てくれたのだ。

 社会人不適合者の良平の部下の割には、とてもまっとうな常識人だった。

「あ〜っ、くそっ後藤めっ、会社に出勤したら、あいつに滅茶苦茶、仕事配ってやるっ! 俺の圭くんに、色目を使うなんて許せんっ!!」

 お前の目の方が腐ってるわ!

「なに罰あたりなこと言ってるんだよ。忙しい仕事の合間を縫って、心配してわざわざ見舞いに来てくれたんじゃないか、良平の為におかゆまで作ってくれて、俺のご飯まで用意してくれてさ、すげー良い人じゃん」

 俺がそう言うと良平はすごく不機嫌な顔をする。

「なんだよ、なんで圭くんあんなやつの肩もつの? 大体俺ってただの上司なのに、そんなに親切にする? おかしいよね、おかしすぎるよね!?」

 いや…それほどおかしいとは思わないけど。

「きっと下心があるに違いないんだ」

「なに馬鹿なこと言ってるんだよ。下心なんてあるはずないだろ」

 第一、良平みたいな上司に取り入ろうなんて命知らずな人間はいないと思うんだけど。



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