蜘蛛手

 02

 前にいるサラリーマンの中年のオヤジや、隣の大学生風の男が迷惑そうな顔で俺を見るが、今はそんな体面を気にする余裕もない。

 まるでそんな俺を嘲笑うように、男の指は好き勝手に動く。

 もう嫌だ。
 気持ち悪い……。

 目頭が熱くなって、じんわりと瞳が濡れていく。 

「やめっ……」

 そう叫ぼうとした瞬間に、口を塞がれた。

「こーら、声を出しちゃダメでしょ」

 自分の後ろから声が聞こえた。

「そんなにアナルを触られるのが怖かったのかな? 今までずっと大人しかったのに」

 クククッと笑うのは、若い男の声だった。
  
 俺は恐怖に血の気が失せる。指先一本も動かすことができない。

「本当は君だって痴漢されるの嫌じゃないんじゃねーの?」

 そんな馬鹿なっ、痴漢されたいなんて思うはずがないっ!

 俺は首を振った。

「そう? だって今まで触り放題だったから、てっきりこうゆうのプレイが好きなんだって思ったよ」

「んんっ!!」

 そんなわけがない。こんなの嫌に決まってる。

「だからさ、今日は皆に集まって貰ったんだ。ほら、このメールでさ」

 男が見せた携帯の写真にあったのは僕が痴漢にあっている映像だった。

「痴漢プレイが大好きな中学生の男の子と遊びたい人は●●線の◇◇駅に6時半に集合!!」

 信じられなかった。
 こんなの嘘に違いない。

 しかし、携帯が目の前から消えると、回りの男達の視線が俺に降り注いでいるのが目に入った。

 目の前の中年のオヤジも、隣の大学生も、その後ろの冴えないフリータ−の男も、好奇の目で自分を見ているのが分かる。

「今日はたっぷり皆で可愛がってやるからな。嬉しいだろ」

 逃げなきゃ……。

 そう思った瞬間、腕がいろんな場所から伸びてきて躯を押さえ付けられた。

「君、可愛い顔して痴漢プレイが大好きなんて、ずいぶん淫乱なんだな」

 目の前の中年のサラリーマンの男がニヤリと笑った。

 その下卑た笑みに鳥肌が立つ。
 
 中年の男は自分の父親より年をとっていて、でっぷりと太って、シワシワの肌から大粒の汗が吹き出ている。

 中年は胸元を探るように触ってきた。

「さあ、まず、君の肌を見せて貰おうからな」

 中年の手がゆっくりとボタンを外していく。

 僕は首を振った。

「フフフッ、可哀想に。泣いているじゃないか。そんなにおじさん達が怖いかい?」

 俺は恐怖と嫌悪でガタガタと震えながら、コクリと小さく頷く。

「大丈夫、もうすぐ怖いのも分からないぐらい気持ちよくして上げるからね」

 ウヒヒヒッ。と中年はゾッとするような声で笑った。

 


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