治療

 02

だけど、その瞬間、先生の顔がニタリと歪んだ。
 まるで口の裂けた悪魔のような笑みだった。

 その無気味な笑みに僕は絶句する。

「止める? 冗談じゃないよ。これからが面白いところじゃないか。これで君は僕のあやつり人形なんだよ」

 ウヒヒヒッ……と下品な笑いを上げた。

 ひやり……と背筋に冷たいものが走る。

 ゾッ……とした。

「止めろよっ、この変態っ、解けよっ!!」

「煩いっ、黙れッ!」

 染谷がそう言った瞬間、僕の声は出なくなった。咽や舌は動いているのに、声は出ない。

 僕の咽はヒューヒューと空気を吐き出すだけの器官になった。

「先生を変態なんて呼ぶなんて弘彰は悪い子だな。今日はいっぱいお仕置きしてやらないとな」

 嫌だっ、嫌だっ、嫌だっ、嫌だっ、嫌だっ!!

 さっきまで怒りでいっぱいだった感情が、恐怖に変わった。

「さあ、まずは裸になりなさい」

 染谷が命令した。

 僕の意志に反して勝手に手が動く。シャツのボタンに手を掛けて外していく。

 嫌だッ、止めろっ!

 僕の心の叫びに指が止まることはない。

 嫌で嫌で堪らないのに、僕の指はシャツのボタンを外して行く。

 僕は恐怖で頭がおかしくなりそうだった。

 シャツを脱ぎ、次はズボンに手をかけて、あっと言うまに脱ぎさった。

 それだけは嫌なのに、僕はブリーフまで脱いでしまった。

 何も纏うものがなくなり、肌に直接空気が触れる。

 染谷のまとわりつく視線が、僕を更に恐怖を増大させた。

「どうだい、裸になった気分は? そんなに怯えた目をして。さっきまで威勢と随分な差だな?」

 僕の躯は震えていた。指一本も動かせず、声も出せない僕にはどうすることもできない。

 それがこんなに怖いものだなんて知らなかった。

「フフフッ、そんなに私が怖いかい? 可愛いな。やっぱり弘彰は怯えた顔が一番可愛いよ」

 染谷の手が僕の頬を撫でる。
 その手はじっとりと汗が滲んで気持ちが悪かった。

 お願い……もう許して……。

 僕は縋るように染谷を見つめた。

「ああ……そんな目で見つめられてたら堪らないよ……」

 染谷は僕の頬を両手で包むようにして、顔を近づける。

 次第に近づいてくる染谷の口脣に僕は気が狂いそうになる。

 止めろっ……ヤダッ……やっ……嫌だぁああああっ!!

 しかし、心の叫びは声になることもなく、気持ちの悪い染谷の口脣が、ムニュリと僕の口脣につけられる。

 それだけでも気持ちが悪いのに、ぬるぬるとした下が口の中に入ってきて、ウネウネと動き回った。

 その内に染谷の唾液まで口の中に流れてきた。

 嫌だ……気持ち悪いよぉ……。

 チュパチュパと舌を吸われて、上顎を舌先で擦られた。

 だが、どんなに気持ちが悪くても、指一本触れられない僕は染谷の為すがままだった。

「はぁ……やっぱり弘彰のお口は甘くて美味しいなあ」

 口もとを唾液でてらてらに濡らした染谷が嬉しそうに言った。

 僕の顔も涙と溢れた唾液でぐしょぐしょだった。

「もう、泣いているのかい? たっぷり泣かせるのはこれからなんだけどな」

 これで終わりじゃないの……。

 僕はショックで茫然とする。


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