デート
中年×少年
満員電車の恋続編
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01
フ〜ン〜ン〜ン〜♪
待ちに待ったこの日に、私は少年のように浮かれていた。
「なんだよとーさん、今日は凄く機嫌がいいね。鼻歌なんか歌って、なんか気持ち悪いぐらい」
と訝しげな目をした息子に言われて、私は気を引き締める。
これじゃあ浮気してますと自ら公表しているのと同じだ。
私は約束の時間より一時間も早いが、家を出ることにした。
どうにも落ち着かなかったのだ。
こんなにソワソワして心が弾む気持ちなんて、何十年ぶりだろう。
初めて好きになった人との初デートと同じ……いや、それ以上かもしれない。
この日の為にたくさん情報誌を買って、いろいろと調べた。
プレゼントも買った。
きっと真澄に似合うはずだ。
早く真澄がこないかと待ち遠しい。
待ち合わせは、私が真澄を犯したあの駅だ。
時間と場所を携帯のメールに送った。真澄からは返信はこなかったが、私は真澄が来ると信じていた。
そして、時間より十分早く真澄は現われた。
「きっと、来てくれると思っていたよ」
私は真澄の私服姿に見蕩れた。
白のパーカーとスリムのジーンズ、ハイカットのスニーカーを折り曲げチェックの裏地がアクセントになっていた。
思ったとおり、私服だとちょっとボーイッシュな少女にも見える。
「本当に今一日付き合ったら、あのデータを消してくれるんですか」
真澄は不安げな強張った表情で私に言った。
「ああ。しかし、私の言うことをなんでも聞くと約束するならね」
真澄は青ざめて、あからさまに動揺していた。
「わかりました……その代わり、絶対データを消すと約束してくださいね」
「わかった、約束するよ」
私は微笑みながら頷いた。
真澄は私の笑みに少し驚いた様子だった。
「じゃあ、まず私についてきて貰おうかな」
私は真澄の手を掴んで歩き始める。
「あっ……あの、手を放してください……」
真澄は嫌そうに手を引っ張る。
「なんだ、もう約束を破るつもりかい。君はあのデータを消して欲しいんだろ?」
ハッと目を見開いて、私を見つめる。
「いえっ……そんなつもりじゃ……ただ恥ずかしくて……」
「手を繋ぐぐらいで恥ずかしいなんて、真澄は本当に初心なんだな。君と私じゃあきっと親子だと思われるから大丈夫だよ」
本当は親子なんて不本意だが、この年齢差ではしょうがない。
真澄はおとなしく、私に手を握られて歩き出した。
真澄の手は柔らかくて小さくて、とても男のものだとは思えない。
私は真澄の温もりを手に感じて嬉しくてしょうがなかった。
私は駅前の公園へと真澄を連れて行く。公園の中の障害者用のトイレが目的だった。真澄は嫌がったが、私はまた約束を盾にした。
「あの何を……」
真澄はまたここで犯されるのだとうと思っているのか酷く怯えていた。
「そんなに怯えなくてもいい。せっかくのデートなのにこんな場所で君を抱いたりなんてしないよ」
そう言ってきかせたものの、やはり真澄は落ち着かない様子で不安そうにしていた。
「これに着替えなさい」
私は肩に担いだ紙袋を真澄へと渡す。
「これは……」
「見ればわかるよ」
真澄は恐る恐る袋の中を開け、取り出したその服をみて絶句する。
真澄の驚いた表情が楽しくてしょうがない。
「一応、一揃え用意したからね。まさか着れないなんて言わないだろ?」
真澄が取り出したのは、小さな花柄が散ったベビーピンクのふわりとしたシフォンのワンピース。
「これを僕に着ろっていうんですか?」
嫌悪に顔を歪ませて、私を睨みつけていた。
「もちろん、君に似合うものをって店員にアドバイスを聞きながら選んだんだ」
「僕は……男です……」
「わかっているよ。でも、私は君に着て貰いたいんだよ」
真澄はギュっと歯を食いしばって屈辱に耐える。
「わかりました……でも、着替えている間、恥ずかしいので後ろを向いていて貰えますか」
「ああ、いいとも」
素直に私は従った。真澄はそれが意外だと思ったのか不思議そうな顔をする。
真澄を視姦しながら着替えさせるのもいいが……愉しみを後にとっておくのも悪くないからだ。
それにせっかくのデートなのだから、少しぐらいは真澄の機嫌をとっておくのもいい。
後ろを向いている間、私はどれだけ真澄が可愛く変身するかを想像して楽しんだ。
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